【マラソン大会に必須な足作り】夏に距離走はしたほうがいいのか?

この記事を監修したのは

高山敦史

 パーソナルトレーナー
インフルエンサー

略歴

某大手スポーツクラブでパーソナルトレーニングの顧客数3年連続1位。
その後、独立。ランナー専門のパーソナルトレーナーとして活動し、【YouTube】タカヤマラソン チャンネルにてランニングメソッドを配信中。チャンネル登録者数9.85万人(2024年7月24日時点)

資格

JATI認定トレーニング指導者

URL

https://takayamarathon.com/profile/

監修者コメント

高山敦史

今回は「真夏の暑い時期、距離走との向き合い方について」がテーマです。

今回は真夏の「距離走(ロング走)」、いわゆる「距離を走る」練習についてです。

この時期に「距離」を意識しだす方は多い印象です。

7月になると、秋のマラソン大会のエントリーが確定してきます。
気持ちがフルマラソンを意識しだします。

加えて、今は暑いですが、暑さが落ち着くと「距離を走る練習」をしないといけなくなります。
となると、暑い時期から「足づくりは始まっている」、ということです。

ただ、「暑さで長く走れない」と考えている方も非常に多いでしょう。
今回は「真夏の距離走」について、お話をしていきます。

これからまだまだ暑い時期は続きます。
皆さまが「身体を守りながら練習を行える」ことを願っています。
ぜひ学んでいきましょう!

真夏のロング走は必要か?

まず、「暑い時期の距離走(ロング走)」ですが、行わなければいけないのかと言うと、「ロング走は必須。しかし慎重に行う」ことが理想です。

この時期は「距離」を意識している方も多いはず。
前回のコラムでも解説した通り、夏は強度、つまり「設定を落として距離を走る」のがポイント。
夏は、「過酷な環境」であるため、設定を落としてもトレーニング効果がある、とお話ししました。

ロング走も同様に行うのですが、なぜ「慎重」に行わなければならないのか。
理由は大きく2つ。
順番に解説をしていきます。

慎重に行う理由:疲労が回復しない

1つめは「疲労が回復しない」です。

夏の高温多湿の影響下では、
・パフォーマンスが上がらないこと
・疲労が回復しにくいこと

この2つが皆さまのランニング練習に大きな影響を与えています。

トップランナーの方が、「真夏のマラソンを走った後に2か月間疲労が回復しなかった。」「夏場にロング走をしたら1週間疲労を引きずってしまった。」といった現象が起こり得るのが、夏のトレーニングの特徴です。

つまり、「1回1回のダメージがなかなか回復しない」のが、夏場のトレーニングの特徴でもあるのですね。

僕も昨年の北海道マラソンを走った後は、疲労が全く抜けず、2週間練習ができなかったこともあります。

経験のある皆様なら、わかると思いますが、「ロング走」は最も疲労が残るトレーニングではないでしょうか。

練習の「強度」は、「運動時間×設定タイム」になります。
20kmや30km走る「ロング走」は、当然運動時間も長くなります。

例えば、強度を下げようとして「設定タイム」を落としたとしましょう。
しかし「設定タイム」を下げても、20kmや30km走ると、「運動時間」は長くなってしまいますので、結果的に長い時間運動を続けることになります。
結果、「強度が高い」練習になってしまうわけですね。

しかも気温が高く湿度が高いと、運動時間が長くなるにつれて、指数関数的な「きつさ」が出てきます。
時間でいうと「60分」を超えたあたりから、距離でいうと「10km」を超えたあたりから、急激に「きつく」なります。

これには色々な原因がありますが、1つ紹介すると、「ドリフト現象」といって、発汗とともに、体内の水分が失われると、血液の粘性が上がります。
そうなると血液の循環が悪くなり、心拍数を上げて、血液を循環させます。
発汗とともに、心拍数が急激に上がって、同じ運動が「きつく」なるのはこのためですね。

運動時間が長くなると、それだけきつさが増し、疲労も残りやすくなるということです。
疲労を残してしまうと、満足に練習できなくなります。
それだけではなく、秋まで疲労を引きずる方もいらっしゃいますので、注意が必要です。

夏場の練習はとても大切ですが、正しく行わないと、秋のマラソンシーズンを棒に振る可能性もあることを覚えておきましょう。

慎重に行う理由:ロング走に慣れていない

2つ目は「ロング走に慣れていない」です。

多くの方は、4月から6月というのはシーズンが終わり、練習の量を落としているのではないでしょうか。
また、練習量は落としていないけど、スピードに特化したトレーニングをメインにしているから走行距離が減っていたりしてないでしょうか。
トラックレースに参加している方はこういった傾向があります。

このような身体の状態で、この暑い時期に「ロング走」を行うとどうなるか。

まず、
・予定していた距離を完遂できない
・完遂できても疲労が大きく残ってしまう
こういったことが起こります。

何度も言うように、夏は疲労が抜けにくいです。
そんな時に、長い距離への耐性ができていない状態で、20~30kmをいきなり走ると、疲れるだけでは済まない可能性があります。
体調を崩してしまったり、熱中症で倒れたりするリスクもあります。

ロング走も、ほかの練習と同様に、短い距離から長い距離に徐々に伸ばしていくことによって、脚が作られていき、長い距離に対応できる脚が出来上がります。

逆に言えば、脚がまだ作られていない状態で、20~30kmと走ってしまうと、ケガのリスクも上がってしまいます。
そしてこの怪我は、疲労の蓄積からくる怪我で、夏に来るのではなく、だいたい疲労がたまり切ったマラソン大会シーズン前、もしくはシーズンに入ったあたりに突然やってきたりするものです。

怪我の原因として、オーバーワークが大きな原因の1つです。

ランニングを初めて間もない方は、1回の練習許容量が少なく、いきなり30kmを走ると、筋肉痛やけがに悩まされることが多いですが、ある程度慣れている方や、フルマラソンを何度も出走されている方であれば、30km走を1回走っても、翌日にはケロッとしている方も多いです。

ただ感じていないだけで、疲労というのは確実に蓄積されていき、その蓄積されたものがマラソン大会シーズン中に爆発してしまう、ということです。

真夏の暑い日に頑張るというのは、とてもストイックで尊敬できますが、「疲労の抜けにくさ」や「距離に慣れていない」という背景を考えると、シーズン直前のようなロング走を行うのは非常にリスクがあると僕は思います。

ただし、夏の間に、ある程度の距離を踏む準備、つまりロング走の準備をしておけば、涼しくなってから、マラソンの特異的な練習である「30km以上走るようなロング走」を導入しやすくなります。

つまり、秋にロング走がすぐできるように、夏の間にはある程度は「準備」をしておくべき。
ということですね。

「夏のロング走」練習法

そのためのおすすめの練習法というのは2つ、
・2部練
・休憩を入れながらのロング走

です。

練習法①:2部練

「2部練」とは、つまり「分割走」ですね。

例えば、朝に10km走って夜に10km走る、など分けて練習します。
これなら、1日に20kmを走ることができます。

暑いときに1回で長い時間を走ることは難しいけど、2回に分けることによって、1日の合計距離を伸ばすことはできます。

連続して走るよりは、距離走としての足づくり効果は落ちるかもしれませんが、疲労の蓄積を抑えられる、というのは最大のメリットであり、夏にこの考えは、非常に重要です。

練習法②:休憩を入れながらのロング走

2つ目は、「休憩を入れながらのロング走」です。

「9月以降は120分以上走りたい。」「9月以降は20km以上連続で走りたい。」と思っている方でも、まず「90分」や「15km」から始めましょう。

夏のロング走の上限

1回の走行の上限距離の目安は、週間走行距離の25-30%前後です。
ランニング歴が長ければ、30%ほど走ってもOKでしょう。

例えば、
・週間50kmの人は、12-15km
・週間60kmの人は、15-18km
・週間70kmの人は、17-21km
というように、1回のロング走の上限値を超えないことが、疲労を溜め過ぎないポイントです。

つまり、ロング走を行うには、「週間走行距離」が非常に重要なポイントであることが分かります。

「1回多く走れば、脚作れるんでしょ?」という考えだと、1回の練習に下半身が耐えられず、怪我をしてしまいます。

「脚作り」には、「ロング走」が大切です。
しかし、そのロング走を行うためには、「週間走行距離」、つまり「日々の走行距離」も大切という事を、必ず押さえておきましょう。

休憩の入れ方

少し話は脱線しましたが、夏は、「休憩」を入れながら走ることをお勧めします。

例えば、
・15分ごとに1分の給水をいれる
・5kmごとに1分休憩を入れる
など、この休憩を木陰で行うだけで、随分と走りやすくなるかと思います。

ポイントは暑くてバテてしまう前に、しっかり給水をすることです。
きつさを感じだしてから休憩をいれても、なかなか回復しません。

「周回コースで1周回ったら」「1km走ったら」「10分走ったら」と決めておきましょう。

早朝や夕方以降の比較的暑さがマシなタイミングかつ、慣れていけば、この方法で、20km以上走れる方も多いです。

脚作りの準備段階、初期段階では十分にいいトレーニングになります。

ただし、先ほどもお伝えした通り、暑さが少しでもマシな「早朝」若しくは「夕方以降」などの走るタイミングや、気温や日差し、そして湿度なんかもチェックしてくださいね。

ロング走実践例

最後に、僕がこの時期にロング走をする場合、どのようにしているかお話します。

まず「暑さがマシな時間」を選び、「1kmや2kmの周回コース」を選びます。
1周終わるごとに、給水を入れますが、あくまで給水、水を飲んでかぶり水をしたら、すぐにスタート。
こんな感じで20kmほど走っています。

ペースは普段の低強度よりも、遅いペース、というよりペースはほとんど気にせず、淡々と走っている、という形です。
この時期は、ペースを気にすると本当にきつく、そして気持ち的にも嫌なので、「暑さの中で走るという事は、それだけ過酷でトレーニング効果が高い」と思いながら、走っています。

いかがでしょう。
「夏の間に脚を作りたい」という気持ちは、とても分かります。
ただし、「安全第一」「いのちだいじに」を大前提に、向き合うようにしてください。

疲労を溜め過ぎなければ、秋になったら嘘のように軽くなります。
今の時期は頑張りすぎず、「つなぐ」ことを意識していきましょう。

夏は足作りの「準備」、「基礎段階」という事がキーワードです!

監修者コメント

高山敦史

皆さん、いかがだったでしょうか?
僕のYouTubeチャンネルでも解説しておりますので、ぜひご覧ください!

本記事のまとめ

まとめ
  • 夏は、秋のロング走のための「準備期間」。「脚作り」のため、夏のロング走は必須。ただし、慎重に行うこと!
  • 注意①:夏の環境はきつさが増し、疲労が残りやすいので注意すること
  • 注意②:夏は練習量や走行距離が減少し、身体がロング走に慣れていないので、徐々に距離を伸ばすこと
  • ロング走練手法
    ①1日の練習を2回に分けて、1日の合計距離を伸ばすこと
    ②休憩のタイミングを決めて、こまめに休憩を入れること
    ③ロング走の距離の上限は週間走行距離の25-30%前後まで
    ④ペースは気にせず走ってもOK

出典

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