【ランナーのよくある疑問】質と量はどちらが大事?

この記事を監修したのは

高山敦史

 パーソナルトレーナー
インフルエンサー

略歴

某大手スポーツクラブでパーソナルトレーニングの顧客数3年連続1位。
その後、独立。ランナー専門のパーソナルトレーナーとして活動し、【YouTube】タカヤマラソン チャンネルにてランニングメソッドを配信中。チャンネル登録者数8.93万人(2023年12月20日時点)

資格

JATI認定トレーニング指導者

URL

https://takayamarathon.com/profile/

監修者コメント

高山敦史

今回は「練習の質と量はどちらが大事?」がテーマです。

さあ、練習の「質」と「量」。
これはどちらが大事なのか。

ある方は「月間走行距離をしっかり伸ばしてマラソン対策を」と言いますし、ある方は「質の高い練習をすれば、月間走行距離は伸ばさなくてよい」と言います。

これはいったいどちらが正しいのでしょうか(笑)
今回はこれを深堀りしていきたいと思います。

マラソン大会が終わった方も、今まさにマラソン大会を控えている方も、これからの練習に役立てて頂ければと思います。
ぜひ一緒に学んでいきましょう!

ランニングは「質」と「量」どちらが大事?

まず、ランニングでいう「質」と「量」とは
●「質」=練習のペースやポイント練習の強度
●「量」=月間走行距離
といったところでしょうか。

ポイント練習の強度を高めていくのか。
週間走行距離や月間走行距離を求めていくのか。

これは結論、両方を高めていくことが重要ですね。

「いや、結局そうかい。」と思いますよね。

でも、そうじゃないですか?
だって、走行距離をしっかり踏んでいても、マラソン大会の後半に足が止まる人もいるし、ポイント練習だけでマラソン大会を乗り切っている人にも、ミスレースはあります。

そもそも走行距離が不要であれば、実業団選手や海外の選手は月間1000kmも走らないわけです。

要は自分に何が足りていないか。
ここを判断するのが大切です。

例えば、「月間300kmのジョグだけでも記録が伸びている」という方であればそのままでいいですし、「週3回のポイント練習だけで記録が伸びている」のなら、その質を上げていけばいい、ということになります。

自分に足りていないのは「質」と「量」どっち?

ところで、トレーニングは負荷がずっと同じでは、パフォーマンスを伸ばしていくことはできません。

トレーニングの原則で「漸進性(ぜんしんせい)の原則」というものがあります。

これは「同じ負荷でずっと続けるのではなく、徐々に負荷を高めていく必要がある」という原則です。
筋力トレーニングの原則でよく言われるのですが、ランニングにおいても同じことが言えます。

「質」を高めた方がいい例

例えば、ある方のサブ4を達成したときの練習が、
・月間200km
・1km 6分のジョグのみ
で達成したとします。

この方が3時間50分を目指すときに「同じメニューでいいのか?」となると答えは「NO」になります。

この方がさらにタイムを伸ばすためには、
・月間200kmのままでもいいから、1km 6分だったジョグを5分50秒まで上げる
・週に1回のペース走やインターバル走を取り入れる
など、メニューを変える必要があります。

「量」を高めた方がいい例

もう1つ例をあげると、
・サブ4を達成したときの練習は月間100km
・達成したけど後半は脚がつってボロボロだった

この方は、筋持久力に課題があるので、月間の走行距離を100km→150km→200kmと伸ばしていく必要性があるでしょう。

つまり、タイムを伸ばしていくには、
・「質」と「量」は両方大事
・その時に自分が不足しているものを、強化する必要がある

という事です。

まあ、「そんなことはわかっている!」という声も聞こえてきそうですね。

「質」or「量」判断の目安

どちらを優先的に伸ばしていく方が良いのか。
今回は一つの目安としてお伝えしていきます。

「量」を優先すべき人

マラソン初心者

マラソンを始めたての人やまだ経験が少ない人であれば、まず質を上げるのではなく、「練習量」、つまり「距離を走ること」から始めましょう。

これは、何も走行距離を200kmや300km走れと言うのではなく、スピードは上げなくていいから、徐々に走る距離を増やして、マラソンを走るための筋持久力を作りましょう、ということです。

マラソンは誰でも等しく42km走ります。
なので、まずは42km走り切れる足を作らなければいけません。
そのためには心拍数を上げて速ることよりも、時間がかかってもいいから、遠くまで時間をかけて走ることが重要です。

少し極端な言い回しですが、1000mのタイムを速くしても、最長10kmしか走ったことがなければ、フルマラソンを歩かずに完走することは難しいでしょう。

逆に言えば、1000mのタイムは速くなくても、日ごろから20kmや30kmをしっかり走って足づくりをされている方であれば、フルマラソンを歩かずに完走することはできるでしょう。

目標ペースを達成している方

また、「5時間切りを達成したい」と思っている方が、普段、6分30秒のペースでジョギングしていたとします。
5時間切りに必要な平均ペースは7分7秒です。
この方の場合、練習の設定ペースを上げる必要はなく、走行距離を伸ばして、1回の走行距離で足をつくっていく事が必要ですね。

「質」を優先すべき人

ランニング歴があり、ジョギングだけでは記録が伸びない人

トレーニングの初期段階は、ジョギングだけでも走力は向上していきます。
これはランニングだけではありません。
ダイエットや他のスポーツ、ビジネスの場でもあてはまります。

同じ事をしていても、最初は成果が出やすく、徐々に成果は小さなものになっていきます。

なので、マラソンでも最初は、ジョギングで走行距離を伸ばしていくだけでも、大きくベストを更新できますが、それだけでは、徐々に走力の向上は小さくなっていきます。

これを「収穫逓減(しゅうかくていげん)の法則」といいます。

こちらもよければ調べてみてください。

ということは、いつかジョギングだけではタイムが伸びない時期がやってきます。

そして、その時期は人によって違います。
サブ5やサブ4かもしれませんし、サブ3.5かもしれません。

この時期に、先ほど同様「距離を伸ばしていく」という強化方法もありますが、我々市民ランナーの月間走行距離は200km~300km前後、どれだけ多くても400kmくらいではないでしょうか。

つまり、「量」をこなすにも限界があります。

そう感じたときに、「練習の質を高めていく」、つまり、練習のペースを上げたりポイント練習を導入したり、という流れがベストです。

個人的には月間200km走っている方はポイント練習をちゃんと取り入れた方が良いかなと思っております。

例えば、ランニング歴が1年以上あり、普段からコンスタントにジョギングだけで150kmや200km走っている方であれば、ジョギングだけでは記録は伸びにくくなります。
こういった方は練習の「質」を高める「ポイント練習」を導入するべきでしょう。

ポイント練習を導入したことがない方は、週に1回~2回、強度の高い練習を取り入れると、飛躍的に記録は向上するでしょう。

なぜなら、ここにも先ほど解説した「収穫逓減の法則」が当てはまります。
そう、初めて導入するトレーニングというものは、自分の身体に対して刺激が大きく、身体への反応も大きいです。

ただ、もちろんこれも続けていくと、成長具合も小さくなりますね。
そんなにポンポンと自己記録が伸びたら、ずっと自己ベストは更新できますし、世界記録もポンポンと更新できます。

なので、トレーニングの「強度」や「量」というのは適切に、しかし確実に増やさないといけません。

とはいえ、
・「漸進性の原則」:トレーニングの強度は徐々に増やしていかないといけない
・「過負荷の原理」:日常以上の負荷を与えないといけない

という原理もあります。

これらのことから、ポイント練習を導入するだけでなく「徐々にトレーニングの強度を高める努力はしないといけない」という事ですね。

まとめると、「どちらを先に高めていく?」という問いには、
・トレーニングを始めたばかりの方はスピードにこだわらず、じっくり距離を伸ばす
・ランニング歴があり、ジョギングだけでは記録が伸びない方は、強度を高めるポイント練習を導入していく

が回答になります。

もちろん、初心者の方がジョギングの量を増やしていくうちに、スピードが速くなることもあります。
そして、ポイント練習を取り入れた方も徐々に走行距離を伸ばす方がいいでしょう。

「質」と「量」を上げるときの注意点

そして最後に大切な警告です。

練習量を増やして、練習の強度が上がると間違いなく「怪我のリスク」が上がります。

身体は未知の刺激に対して、対応するべく成長していきます。
しかし未知の刺激という事は、それだけ身体に対して大きな負荷をかけています。

ポイント練習を導入して1年は記録も伸びやすいですが怪我もしやすく、走行距離を急激に伸ばすと怪我に繋がるという事も覚えておいてください。

対策として、
・週間走行距離を5-10%の増加率で伸ばしていく
・インターバル走は週間走行距離の10%未満
・ハイペース走は腹八分目で切り上げる

この辺りを意識しましょう。

また
・週間走行距離を伸ばしたのであれば、練習のスピードはあげない
・練習のスピードを上げたのなら週間走行距離は伸ばさない

要は「質」と「量」を上げるときは、どちらか一つということです。

いかがでしょうか。
正しく「質」と「量」を伸ばしくことができれば、間違いなく皆さまの記録は向上していきます。
なので、正しく少しずつ高めていきましょう。

監修者コメント

高山敦史

皆さん、いかがだったでしょうか?
僕のYouTubeチャンネルでも解説しておりますので、ぜひご覧ください!

本記事のまとめ

まとめ
  • 「質」と「量」は両方大事
  • 自分に不足しているものを強化する
  • 目安として ①初心者は「量」 ②「量」に限界を感じてきた方は「質」 を高めよう
  • 「質」と「量」を上げるときは、どちらか「一つ」だけ上げる

出典

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